アクセラレーションプログラムを全力で駆け抜けた、2チームによる成果発表

「美大にしかできない、創業の場づくり」を掲げ、企業や他大学と連携しながらさまざまなバックグラウンドを持つ者同士で対話を重ね、新たな事業の創出を目指す「武蔵野美術大学実験区」。2026年3月10日(火)、2025年度のアイデア創出ワークショップやビジネスデザインアワードへの挑戦を経て、ビジョンの社会実装を加速させるアクセラレーションプログラムに取り組んだ2チームによる成果発表が、武蔵野美術⼤学市ヶ⾕キャンパス「Ma」にて行われました。

自分だけの思考資産で“本当の自分”をメタに捉える

最初の登壇者は、ビジネスデザインアワード「MAU SOCIAL IMPACT AWARD 2025」で準グランプリを受賞した、武蔵野美術大学クリエイティブイノベーション学科3年生の中山美咲さん。

高校時代から日々の気づきや疑問、考えたこと、記憶に残った言葉をメモに残してきたという中山さんが、新しい自己探究の体験として社会実装を目指すプロジェクトが、『Metalogue(メタログ) 〜“本当の自分”をメタに捉える、自然の中での対話体験〜』です。Metalogueは、自然のなかでの1対1の対話をアプリに記録し、その音声データのAI分析をもとに、自分自身との対話を実現させるというもの。仕事や学業で忙しい日々のなかで、思考の整理をしたいときや判断基準に迷ったときの拠り所となる、そんな体験サービスです。


「言語化された対話ログは、自分だけの“思考資産”になる」と中山さん。

「私自身、高校生のころから続けてきたメモで、自分の後悔を克服した経験があります。また、家族や大学でいろいろな人と対話をするなかで、自分の価値観がつかめてくるという感覚がありました。自己開示しやすい自然のなかで対話し、自分の思考を分析することで、誰もが自分の決断に納得できる世界を目指していきたいです」

中山さんは、Metalogueの実証実験に向けたクラウドファンディングを「MotionGallery」で実施(現在は終了)。「支援してくださったみなさんとともに実証実験を実施し、対話のメソッドやサービスを確立させていきたい」と、発表を締めくくりました。

子ども、地域、美大生をつなぐ持続可能な仕組みづくり

2組目の登壇者は、ともに武蔵野美術大学芸術文化学科3年生の、石井美羽さんと多谷咲希さんのチームです。「MAU SOCIAL IMPACT AWARD 2025」では、子どもたちのコミュニティを居心地よくすることをテーマにカードゲームを制作し、特別賞を受賞。アクセラレーションプログラムに取り組むなかで自分たちの思いに向き合い直し、プロダクトではなく「ムサビ生としての子どもたちとの関わり」を軸に据えました。


そうして生まれたのが『まち育子どもアトリエプロジェクト 〜子どもを育てることを、まちの仕事に〜』です。このプロジェクトは、居場所に悩みを抱える子どもたちと、子どもに向けたコミュニケーションデザインに関心を持つムサビ生をマッチングし、ムサビ生が企画を立て地域のなかで実施するというもの。子どもにとっては居場所に、ムサビ生にとっては学びのフィールドでありアルバイトにもなる場を持続的に運営する仕組みづくりです。

アクセラレーションプログラムの期間中、石井さんと多谷さんは、活動エリアとなる国分寺市の子どもを取り巻く状況をリサーチし、地域のなかで、まち育子どもアトリエプロジェクトとしてのイベントを4回にわたり開催しながら、居場所づくりの持続可能なかたちを模索しました。

「国分寺市は子どもの居場所づくりが盛んで、子どものために尽力する大人がたくさんいる地域です。だからこそ、私たちは美大生としての視点で子どもを楽しませたいと思いました」と話す石井さん。実際に地域に飛び込んで得られた手応えが、今後の社会実装に向けた追い風となっているようです。


現在、まち育子どもアトリエプロジェクトでも、社会実装に向けたクラウドファンディングを計画中です。このクラウドファンディングを地域の人に支援してもらうことが、「地域で一緒に子どもを育てる仕組みづくり」の一環となる。石井さんと多谷さんはそう考えます。

自分のアイデアを社会に差し出すプロセスを経て見えてきたもの

2チームのプレゼンが終わり、会場ではポスターセッションの時間も設けられました。発表を聞いた参加者たちが登壇者に質問したり、参加者同士で意見を交わしたり、クラウドファンディングに支援したりと、活発な交流が行われていました。


【登壇者のコメント】

『Metalogue 〜”本当の自分”をメタに捉える、自然の中での対話体験〜』中山美咲さん
クラウドファンディングを始めるときは、不安に駆られて悩みましたが、「やっぱりやりたい」という思いで突き進み、今日はスッキリした気持ちでプレゼンすることができました。ポスターセッションでは、プレゼンを聞いてくださった方たちからより具体的なアドバイスやご提案をいただき、いろいろなお話ができたのでよかったです。

『まち育子どもアトリエプロジェクト 〜子どもを育てることを、まちの仕事に〜』石井美羽さん
8月のアワードのプレゼンでは、自分たちのアイデアにまだ不安がありました。アクセラレーションプログラムでは、地域でのイベント開催も含めて全力で駆け抜けてきたので、今日のDEMO DAYは、笑顔で自信を持って話すことができたと思います。それもひとつの大きな成果だと捉えています。

『まち育子どもアトリエプロジェクト 〜子どもを育てることを、まちの仕事に〜』多谷咲希さん
今日のプレゼンでは、自分たちの目標ややってきたことが明確になり、美大生が地域で活動することの価値や可能性が見えてきました。たくさんの人に私たちの話を聞いてもらうことができ、とてもうれしかったです。

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